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新しくなった肺炎球菌ワクチンについて

令和8年4月1日から高齢者定期接種に使用する肺炎球菌ワクチンが新しくなったことを皆さんご存じでしょうか。

肺炎球菌ワクチンとは

肺炎球菌感染症とは、肺炎などの原因となる肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気です。

この菌は、主に気道の分泌物に含まれ、咳やくしゃみなどを通じて飛沫感染します。

日本人の約5~10%の高齢者では鼻や喉の奥に菌が常在しているとされ、これらの菌が増殖すると、気管支炎、肺炎、敗血症などの重い合併症を起こすことがあります。

この肺炎球菌感染症を予防するのが肺炎球菌ワクチンです。

今年度より高齢者定期接種に用いられてきたワクチンが、ニューモバックス(PSSV23)からプレベナー(PCV20)に変更になりました。

従来のニューモバックス(23 価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン)(PPSV23))は100種類以上の血清型がある肺炎球菌のうち、23種類を対象としたワクチンでしたが、これに代わって今年度より高齢者定期接種で接種することになった、プレベナー20(沈降20 価肺炎球菌結合型ワクチン(PVC20))は20種類を対象としたワクチンとなります。

プレベナー20(PVC20)に含まれている肺炎球菌の血清型はニューモバックス(PPSV23)とほぼ同じですが、成人の侵襲性肺炎球菌感染症から検出された肺炎球菌血清型の疫学調査に基づき決定され、検出頻度が低かった血清型が省かれているので種類が減っています。

種類が減っているけど大丈夫?と思われるかもしれませんが、免疫調査の結果では新しいワクチン(PCV2)の市中肺炎患者に対するカバー率は72.6%と従来のワクチン(PPSV23)の67.7%よりも高く 1)、 加えて血清型由来の侵襲性肺炎球菌感染症だけでなく、血清型に依らない侵襲性肺炎球菌感染症全体の3~4割程度も予防する効果があるという研究結果も出ており、従来のワクチン(PPSV23)と同等以上ということが証明されています。(侵襲性感染症とは、本来は菌が存在しない血液、髄液、関節液などから菌が検出される感染症のことをいいます。)

なぜワクチンを打つの?(3つの免疫応答系統について)

ちょっと難しい話になりますが、なぜワクチンを打つのか、ワクチンの働きについても少し解説してみますので、一緒に勉強してみましょう。

ワクチンによって誘導される免疫応答には3つの系統があります。

①T細胞非依存型免疫応答

莢膜多糖体抗原によりナイーブB細胞が活性化され、lgM型形質細胞に分化し、lgM抗体が産生されることにより免疫応答が起こります。

②T細胞依存型免疫応答

莢膜多糖体抗原とキャリア蛋白によりヘルパーT細胞が活性化されることで、ナイーブB細胞からlgG型形質細胞の分化とlgG型メモリーB細胞が産生されます。

この分化したlgG型形質細胞から産生されたlgG抗体により免疫応答が起こります。

③メモリーB細胞の免疫記憶による免疫応答

体内に元々存在しているメモリーB細胞が活性化されることでlgG型形質細胞に分化し、lgG抗体を直ちに産生することによって免疫応答がすばやく起こります。

ワクチンを打っておけば、先程説明したように、前もって抗体やメモリーB細胞が作られているので、感染してもすぐに免疫応答が働けます。

すなわち、体が早く対応できることによって感染が悪化してしまわないので早く治る、または感染を防ぐことができることになります。

ワクチンを打つことによるメリットについて理解していただけたでしょうか。

ちなみに、従来の多糖体ワクチン(PPSV23)による免疫応答は①のT細胞非依存型免疫応答だけでした。

抗体による応答が迅速に起こるという利点がありますが、効果は終生免疫ではなく、初回接種からの時間の経過とともに抗体価が緩やかに低下してしまいます。

よって有効性持続のために5年毎の再接種をお勧めしていました。

新しく代わった結合型ワクチン(PCV20)は3つの免疫応答が働きます。

特にヘルパーT細胞が関与する②のT細胞依存型免疫応答で産生されるメモリーB細胞は免疫二次応答によりさらに多くのlgG抗体を産生するとともに、次の感染に備えて体内に長く生存し続けます。

よって、従来の多糖体ワクチン(PPSV23)よりも抗体価が下がりにくくなるので、現時点では追加接種の必要はなく、生涯に一度でよいことになっています。

あなたはプレベナーそれともキャップバックス?

結合型ワクチンにはもう1種類キャップバックス(21 価肺炎球菌結合型ワクチン)(PCV21)といった新たに接種可能となったワクチンがあります。

このワクチンは成人の侵襲性肺炎球菌感染症の原因となった血清型に対するカバー率は80.3% 2) と従来のワクチン(PPSV23)に比べて高く、同等以上の予防効果が期待できます。

キャップバックス(PCV21)は成人の侵襲性肺炎球菌感染症から検出された肺炎球菌血清型の疫学調査に基づき決定された血清型を選択して21種類となっています。

他のワクチンとは含有する血清型が若干異なりますが、主要な血清型は含まれているので安心してください。

更に異なる血清型が含まれていることで、従来のワクチン(PPSV23)を接種されていた方は、より広範囲の血清型に対する効果が期待できると考えられます。

キャップバックスは、より現在の流行が考慮されているワクチンなのです。

(参考)肺炎球菌ワクチン血清型一覧 3)

※ 血清型6Aは23価莢膜ポリサッカライドワクチンには含まれない

*1 de-O-acetylated 15B:血清型15Cと構造類似の莢膜ポリサッカライドであるため、血清型15Cに対する免疫応答を誘導する

キャップバックス(PCV21)もプレベナー20(PCV20)と同じく、結合型ワクチンなので、先ほど説明した3つの免疫応答が誘導されます。

キャップバックス(PCV21)は抗体価が下がりにくいため、従来のワクチン(PPSV23)のように5年毎の再接種は現時点では必要なく、生涯に一度だけの接種となっています。

過去にニューモバックス(PPSV23)や他の肺炎球菌ワクチン(PCV20など)を接種された方がキャップバックス(PCV21)を新たに接種しても免疫応答や安全性に問題はありません。

さて、あなたが今打つべきワクチンはどれなのでしょう。

現時点での私の私見としては、自治体の補助がある場合はプレベナー(PCV20)を打つのがよいかと思われます。

前回ニューモバックス(PPSV23)を打って5年経過した方、自治体の補助がない場合はプレベナー(PCV20)ではなく、キャップバックス(PCV21)を打つことをお勧めしたいです。

参考になったでしょうか。

わからないことがあれば、いつでもお問合せ下さい。あなたに最適なワクチンを選択させていただきます。

当院でのワクチン接種は予約制になっております。

来院数日前にご連絡いただければ幸いです。

1), 3) ファイザーHPより引用、改変

2) MSD HPより引用

【ファイザーのおとなの肺炎球菌感染症を学ぶ】